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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)34号 判決

控訴人 井口善太郎

右訴訟代理人弁護士 樋口俊二

同 相良有一郎

被控訴人 井伏満寿二

〈ほか三名〉

右被控訴人四名訴訟代理人弁護士 桑田勝利

同 更田義彦

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴人の新請求につき、

(1)  被控訴人井伏は控訴人に対し、金二一万一五五円及び内金八万二、二六一円に対する昭和四七年六月一日から、内金一二万七、八九四円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。

(2)  被控訴人角は控訴人に対し、金五〇万九四二円及び内金一九万五、〇三九円に対する昭和四七年六月一日から、内金三〇万五、九〇三円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。

(3)  被控訴人甲斐荘は控訴人に対し、金二九万九八七円及び内金一一万三、九〇六円に対する昭和四七年六月一日から、内金一七万七、〇八一円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。

(4)  被控訴人三浦は控訴人に対し、金一一万七、八二三円及び内金四万七、五三二円に対する昭和四七年六月一日から、内金七万二九一円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。

三  控訴人のその余の新請求を棄却する。

四  訴訟費用中、控訴に関する費用は控訴人の負担とし、新請求に関する費用はこれを二分し、その一を控訴人、その余を被控訴人らの各負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中、控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人井伏は控訴人に対し金一三万五、三一一円及びこれに対する昭和四六年四月一日から完済まで年一割の割合による金員を支払え。被控訴人角は控訴人に対し金三二万六、八二八円及びこれに対する昭和四六年四月一日から完済まで年一割の割合による金員を支払え。被控訴人甲斐荘は控訴人に対し金一八万七、三〇三円及びこれに対する昭和四六年四月一日から完済まで年一割による金員を支払え。被控訴人三浦は控訴人に対し金八万五、二九一円及び内金一万八七八円に対する昭和四三年一〇月三日から、内金六万五、四四一円に対する同四六年四月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え(以上、当審において、従前の請求を右の限度に減縮)。当審における新請求として、被控訴人井伏は控訴人に対し金二四万二、二〇一円及び内金八万九、九四五円に対する昭和四七年六月一日から、内金一五万二、二五六円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。被控訴人角は控訴人に対し金五七万八、三五四円及び内金二一万三、六〇〇円に対する昭和四七年六月一日から、内金三六万四、七五四円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。被控訴人甲斐荘は控訴人に対し金三三万五、三五〇円及び内金一二万四、五四二円に対する昭和四七年六月一日から、内金二一万八〇八円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。被控訴人三浦は控訴人に対し金一三万五、四三六円及び内金五万一、七五五円に対する昭和四七年六月一日から、内金八万三、六八一円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで年一割の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴人ら代理人は「本件控訴を棄却する。控訴人の新請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求め、前記請求の減額に同意した。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は、次のとおり附加する外、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

一  従前の請求の減縮

控訴人は、被控訴人らが昭和四三年九月一日から同四六年三月三一日までの分として供託した本件各土地の賃料(被控訴人井伏は金一八万八、八二一円、同角は金四五万六、一三四円、同甲斐荘は金二六万一、三六一円、同三浦は金九万五、七九〇円)の各還付を受けたので、これを右期間内の被控訴人らの各未払賃料の内金に充当した。よって、控訴人は、原審において勝訴した部分を除く従前の請求(即ち、原審における敗訴額。被控訴人井伏に対しては金三二万四、一三二円、同角に対しては金七八万二、九六二円、同甲斐荘に対しては金四四万八、六六四円、同三浦に対しては金一八万一、〇八一円)から右各還付額を控除した残額の限度に請求を減縮し、被控訴人井伏に対しては金一三万五、三一一円、同角に対しては金三二万六、八二八円、同甲斐荘に対しては金一八万七、三〇三円及びこれに対するそれぞれ昭和四六年四月一日から完済まで借地法所定の年一割の割合による利息、同三浦に対しては金八万五、二九一円及び内金一万八七八円に対する本件訴状送達の日の翌日である昭和四三年一〇月三日から、内金六万五、四四一円に対する昭和四六年四月一日から、いずれも完済まで借地法所定の年一割の割合による利息の各支払を求める。

二  当審における新請求

控訴人は、第一審口頭弁論終結後、本件各土地の賃料が毎年、地価の昂騰及び公租公課の増加等により、不相当となったので、被控訴人らに対し、まず昭和四六年五月二〇日その頃到達の書面をもって同年六月分からの本件各土地の賃料を一ヶ月三・三平方米当り金一四〇円に、次いで同四七年五月一〇日その頃到達の書面をもって同年六月分からの本件各土地の賃料を一ヶ月同平方米当り金二〇〇円に、それぞれ増額する旨の各意思表示をしたところ、被控訴人らは本件各土地の賃料として、被控訴人井伏において昭和四六年四月一日から同年一二月三一日まで一ヶ月金六、〇九一円(三・三平方米当り金六五円)、同四七年一月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金七、〇二八円(同平方米当り金七五円)、の各割合による金員合計金八万九、九五九円及び同年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月右金七、〇二八円の割合による金員合計金九万一、三六四円、被控訴人角において昭和四六年四月一日から同年一一月三〇日まで一ヶ月金一万四、七一四円(三・三平方米当り金六五円)、同年一二月一日から同四七年五月三一日まで一ヶ月金一万七、二一〇円(同平方米当り金七六円)、の各割合による金員合計金二二万九七二円及び同年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月右金一万七、二一〇円の割合による金員合計金二二万三、七三〇円、被控訴人甲斐荘において昭和四六年四月一日から同年一二月三一日まで一ヶ月金八、四三一円(三・三平方米当り金六五円)、同四七年一月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金九、七二八円(同平方米当り金七五円)の各割合による金員合計金一二万四、五一九円及び同年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月右金九、七二八円の割合による金員合計金一二万六、四六四円、被控訴人三浦において昭和四六年四月一日から同年一二月三一日まで一ヶ月金三、〇九〇円(三・三平方米当り金六〇円)、同四七年一月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金三、八六三円(同平方米当り金七五円)の各割合による金員合計金四万七、一二五円及び同年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月右金三、八六三円の割合による金員合計金五万二一九円を、それぞれ、控訴人にあて弁済供託した。

よって、控訴人は、原審において請求した以後の本件各土地の賃料として、被控訴人井伏に対し昭和四六年四月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金一万一、二四四円(三・三平方米当り金一二〇円)の割合による賃料計金二万二、四八八円及び同年六月一日から同四七年五月三一日まで一ヶ月月金一万三、一一八円(同平方米当り金一四〇円)の割合による賃料計金一五万七、四一六円、以上合計金一七万九、九〇四円から前記供託額金八万九、九五九円を控除した残額金八万九、九四五円並びに同四七年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月金一万八、七四〇円(三・三平方米当り金二〇〇円)の割合による賃料計金二四万三、六二〇円から前記供託額金九万一、三六四円を控除した残額金一五万二、二五六円との合計額金二四万二、二〇一円及び内金八万九、九四五円に対する昭和四七年六月一日から、内金一五万二、二五六円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで借地法所定の年一割の割合による利息、被控訴人角に対し昭和四六年四月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金二万七、一六〇円(三・三平方米当り金一二〇円)の割合による賃料計金五万四、三二一円及び同年六月一日から同四七年五月三一日まで一ヶ月金三万一、六八七円(同平方米当り金一四〇円)の割合による賃料計金三八万二五一円、以上合計金四三万四、五七二円から前記供託額金二二万九七二円を控除した残額金二一万三、六〇〇円並びに同四七年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月金四万五、二六八円(三・三平方米当り金二〇〇円)の割合による賃料計金五八万八、四八四円から前記供託額金二二万三、七三〇円を控除した残額金三六万四、七五四円との合計額金五七万八、三五四円及び内金二一万三、六〇〇円に対する昭和四七年六月一日から、内金三六万四、七五四円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで借地法所定の年一割の割合による利息、被控訴人甲斐荘に対し昭和四六年四月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金一万五、五六六円(三・三平方米当り金一二〇円)の割合による賃料計金三万一、一三二円及び同年六月一日から同四七年五月三一日まで一ヶ月金一万八、一六〇円八〇銭(同平方米当り金一四〇円)の割合による賃料計金二一万七、九二九円、以上合計金二四万九、〇六一円から前記供託金額一二万四、五一九円を控除した残額金一二万四、五四二円並びに同四七年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月金二万五、九四四円(三・三平方米当り金二〇〇円)の割合による賃料計金三三万七、二七二円から前記供託額金一二万六、四六四円を控除した残額金二一万八〇八円との合計額金三三万五、三五〇円及び内金一二万四、五四二円に対する昭和四七年六月一日から、内金二一万八〇八円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで借地法所定の年一割の割合による利息、被控訴人三浦に対し昭和四六年四月一日から同年五月三一日まで一ヶ月金六、一八〇円(三・三平方米当り金一二〇円)の割合による賃料計金一万二、三六〇円及び同年六月一日から同四七年五月三一日まで一ヶ月金七、二一〇円(同平方米当り金一四〇円)の割合による賃料計金八万六、五二〇円、以上合計金九万八、八八〇円から前記供託額金四万七、一二五円を控除した残額金五万一、七五五円並びに同四七年六月一日から同四八年六月三〇日まで一ヶ月金一万三〇〇円(三・三平方米当り金二〇〇円)の割合による賃料計金一三万三、九〇〇円から前記供託額金五万二一九円を控除した残額金八万三、六八一円との合計額金一三万五、四三六円及び内金五万一、七五五円に対する昭和四七年六月一日から内金八万三、六八一円に対する同四八年七月一日から、いずれも完済まで借地法所定の年一割の割合による利息、の各支払を求める。

(被控訴人らの主張)

一  控訴人の請求の減縮について

控訴人が、その主張のような被控訴人らの供託した本件各土地の賃料の各還付を受けたこと及び控訴人の原審における被控訴人らに対する各敗訴額は認める。その余は争う。

二  控訴人の新請求について

控訴人が被控訴人らに対し、控訴人主張のとおり二回にわたり、その主張の内容の本件各土地の賃料増額の各意思表示をしたこと及び被控訴人らが本件各土地の賃料として、控訴人主張の期間、その主張の割合による金員を、それぞれ控訴人にあて弁済供託したこと(但し、被控訴人らが昭和四七年六月一日から同四八年六月三〇日まで、控訴人主張の割合による金員を、それぞれ弁済供託したことを除く)は認める。しかし、第一審口頭弁論終結後、本件各土地の賃料が、毎年、地価の昂謄及び公租公課の増加等により不相当となったことは争う。

(証拠)≪省略≫

理由

一  控訴人が、原判決末尾添付物件目録第一ないし第四記載の各土地(以下、本件各土地という)につきいずれも普通建物所有の目的で、賃料は毎月末日払と定めて

1  被控訴人井伏に対し、昭和三二年六月二日、右目録第一記載の土地を、期間三〇年の約定で、

2  被控訴人角に対し、昭和六年六月一日、右目録第二記載の土地を、期間三〇年の約定で、

3  被控訴人甲斐荘に対し、昭和一九年四月一日、右目録第三記載の土地を、期間二〇年の約定で、

4  被控訴人三浦に対し、昭和三八年六月二〇日、右目録第四記載の土地を、期間二〇年(但し、これは後述のように、その後昭和六八年七月三一日までと改定された)の約定で、

それぞれ賃貸したこと及び右各賃貸借契約における賃料は、その後漸次改定され、昭和四〇年三月当時いずれも一ヶ月三・三平方米当り金三〇円(合意賃料)であったが、被控訴人三浦については同四一年八月更に合意により一ヶ月同平方米当り金六〇円に改定されたこと並びに控訴人が被控訴人らに対し、その後左記のように、四回にわたり、各賃料増額の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。

被控

訴人

増額の意思

表示到達の日

意思表示

の方法

意思表示の内容

増額の始期

増額された賃料

(一ヶ月三・三平方米当り)

井伏

四二・六・二六頃

書面

四二・七・一

五七円

四三・八・三〇頃

四三・九・一

一二〇円

四六・五・二〇頃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇頃

四七・六・一

二〇〇円

四二・六・二六頃

書面

四二・七・一

五七円

四三・八・三〇頃

四三・九・一

一二〇円

四六・五・二〇頃

書面

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇頃

四七・六・一

二〇〇円

甲斐荘

四二・六・二七頃

書面

四二・七・一

五七円

四三・八・三〇頃

四三・九・一

一二〇円

四六・五・二〇頃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇頃

四七・六・一

二〇〇円

三浦

四二・六・二八

口頭

四二・七・一

七五円

四三・八・三〇頃

書面

四三・九・一

一二〇円

四六・五・二〇頃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇頃

四七・六・一

二〇〇円

二  そこで控訴人の本件各賃料増額請求の当否について判断する。

≪証拠省略≫を綜合すれば、次の事実が認められる。

1  本件各土地は、いずれも、国鉄中央線荻窪駅の北西徒歩約一五分、又四面道バス停留所から徒歩数分の地点にある東京都杉並区清水一丁目二四番一号宅地二一六三・〇八平方米(但し、分筆前は右二四番宅地二五一〇・五七平方米)の一部であって、被控訴人井伏同甲斐荘同三浦の各賃借地が公道に面して東西に相隣接し、その北側に被控訴人角の賃借地が同様、公道に面して所在するが、全体として、四周を幅員約六米の舗装公道及び私道によって囲まれた、平担な、ほぼ同条件の一団の住宅地である。

本件各土地附近は、都市計画上、現在、住居専用地区、第一種高度地区及び第九種空地地区に指定され、中級以上の住宅が連続する比較的閑静な住宅街であるが、日用品店舗、小学校、病院等までいずれも約五分以内の環境の良い低層の独立住宅地域であるので、今後は更に第一種住居専用地域に指定される見込である。

2  本件各土地を含む前記宅地清水一丁目二四番一号の租税(固定資産税及び都市計画税)並びに時価(更地価額)は、左記のとおりである。

租税

区分

固定資産税

都市計画税

税合計額

三・三平方米当り

昭和年度

年税額

月税額

三九・四〇

四二、八七一

七、三四九

五〇、二二〇

七六

六円三三銭

四一

六一、七三五

一一、七五九

七三、四九四

一一二

九、三三

四二

七四、〇八二

一八、八一四

九二、八九六

一四一

一一、七五

四三

八八、八九八

三〇、一〇三

一一九、〇〇一

一八一

一五、〇八

四四

一〇六、六七八

四七、八五七

一五四、五三五

二三六

一九、六六

四五

一三八、六八一

七六、五七二

二一五、二五三

三二八

二七、三三

四六

一八〇、二八六

一二二、五一五

三〇二、八〇一

四六二

三八、五〇

四七

二三四、三七二

一四五、六五三

三八〇、〇二五

五八〇

四八、三三

四八

三二八、一二一

二四九、六九二

五七七、八一三

八八三

七三、五八

単位 円

3  本件各土地附近の借地の賃料(一ヶ月三・三平方米当り)は左記のとおりである。――いずれも住宅地

時点

昭和年月

四〇・三

四一・六

四二・七

四三・八

四四・六

四五・七

四六・六

四七・七

備考

場所

清水

一―

二五―

一九

一五〇円

一八〇円

なお、40年から45年までの間の賃料も控訴人の貸地と大差なきものと認められる。

一―

五三―

二五

一四〇

一八〇

一―

四九―

一九

一四〇

一八〇

一―

三三―

一二五

二〇〇

一―

一五―

二二

一七五

二一五

桃井

一―

一一―

一七

一五〇

一九〇

清水

一―

二四―

三〇円

四〇円

五〇円

六五円

八〇円

白石

一―

二四―

三〇

四〇

五二

六七

八二

北岡

一―

五〇

三〇

四〇

五〇

六五

(四四・七

から)

八〇

一一〇

一四〇

一八〇

菅野

控訴人の貨地

一―

五〇

三〇

四二

五二

六七

八二

一一二

一四〇

一八〇

一―

五〇

三〇

四二

五二

六七

(四四・七

から)

八二

一一二

一四〇

一八〇

高島

時価

時点

価額(三・三平方米当り)

昭和四〇年三月

約一二万円

〃四一・八〃

〃一四〃

〃四二・七〃

〃一六〃

〃四三・九〃

〃一八〃

〃四六・六〃

〃二八〃

〃四七・六〃

〃三三〃

〃四八・七〃

〃四八〃

(備考)右は近隣地域における取引事例による比率価格である。

4  被控訴人らは、本件各土地を賃借以来、それぞれ各賃借地に建物を所有してこれに居住し、少くとも中流以上の生活を営んでいるが、被控訴人三浦以外、控訴人に対し、各賃貸借契約締結の際も又その後同契約を更新する際も、権利金、敷金又は更新料等いかなる一時金も支払ったことがない。ただ被控訴人三浦は昭和四一年八月、従前の建物を改築するに際し、控訴人との間で前記賃貸借契約を期間昭和六八年七月三一日、賃料一ヶ月三・三平方米当り金六〇円と改めるにつき、更新料名義で控訴人に対し金四〇万八、〇〇〇円を支払った。

5  控訴人は本件各土地の隣地に居住し、戦前からその所有にかゝる本件各土地等を多数の者に賃貸していたところ、戦後は財産税等のため一部を物納したり又は売却したりしたので、現在は右所有地の賃借人も被控訴人らを含め一〇数人となったが、依然、主として右賃貸借の賃料及び別に経営するアパートの賃料収入により、その一家の生計を維持し、この関係上、土地建物に対する公租公課の増加の都度、右借地人らに賃料の増額を請求している。

以上認定の事実によれば、本件各土地の賃料は、控訴人の前記各賃料増額請求当時、いずれも、土地に対する租税の増加及び地価の高騰により、又比隣の土地の賃料に比較して、不相当の状態にあったものというべきである(但し、被控訴人三浦については、後記のとおり、一部問題がある)。

そこで、右各増額請求時における本件各土地の適正賃料額について按ずるに、土地の賃料の定め方には種々の方式があるが、その代表的な方式とされるものは積算式評価法、賃料事例比較法、収益分析法及びいわゆるスライド式評価法の四種である。このうち積算式評価法は目的土地の価格(通常これは取引事例比較法等により算出する)に期待利回りを乗じ(この結果を純賃料という)、これに公租公課(固定資産税、都市計画税等)及び管理費用(これは、通常、純資料の三分といわれる)等の必要諸経費を加算して、目的土地の賃料を求めるものであり、賃料事例比較法は賃貸借等の事例となった同類型の土地と目的土地とについて、品等、時点及び賃貸借契約の内容等を比較対照して、目的土地の賃料を求めるものであり、又収益分析法は目的土地が一定期間に生み出すであろうと期待される純収益より賃料を求めるものであって、一般の企業経営に基く基準的な年間純収益より目的土地の賃料を求めようとする方法であり、更にいわゆるスライド式評価法は既定賃料を標準とし、これにその後における経済変動(地価の上昇、所得の増加、公租公課の増徴及び物価の騰貴等)による修正率(多くの場合、地価の上昇率をこの指標とみる)を乗じて、目的土地の賃料を求めるものである。そして、以上の各方式にはそれぞれ理論的な根拠があるが、当裁判所は、左記のような理由に基き、土地(居住の用に供される宅地)の賃料の定め方としては、右各方式のうち積算式評価法による賃料を主体とし、これに賃料事例比較法による賃料を斟酌して決定するのが最も合理的な方法であると考える。

1  元来、土地の賃料は賃貸人が賃借人に土地を使用収益せしめる対価として支払われるものであるから、賃貸人の賃貸土地資本に対する適正な利潤相当額であることは当然であって、この意味から積算式評価法は最も多く利用されていること。

2  これに対し賃料事例比較法は、土地の賃貸借の当事者は他の同類型の土地の賃料と比較するのが通例であって、これに基き行動するという人間の経済性(これは相当、重要視すべきことである)に理論的根拠をおくが、実際には適切な規範性のある事例の把握と時点修正、事情補正及び当事者間の契約条件等個別的要因の分析と比較が必ずしも容易でない難点があること。

3  又収益分析法は企業用に供されている土地についてのみ適用し得る方式であって、本件のように居住用に供されている土地については適用ができないこと。

4  更にスライド式評価法は、その基礎となる既定賃料及びこれに乗ずる修正率がいずれも適正なものであることが当然の前提であるが、賃料が数次にわたり改定されている場合は何時の時点の賃料を以て適正な既定賃料とするか認定困難であるのみならず、修正率についても地価の上昇率のみを基準として定めるのか、他の要素によるのか、又は経済変動のすべての要因を斟酌して定めるのか決定必ずしも容易でなく、更に近時のような土地価格の急上昇の場合には、賃料は必ずしもこれに順応せず、かなり低額に定められているのが実情であるから、既定賃料を単純に経済変動にスライドさせたものが適正賃料であるともいい難いこと。

しかしながら、積算式評価法によって賃料を定める場合にも、その具体的、個別的な適用に当っては、更に細かな検討を要する。蓋し、右方式の二大構成要素である土地の価格と期待利回りにつき、具体的な或る賃料を評価する場合に、如何に決定するかは、結果として算定される賃料の額を大きく左右し、その妥当性を問われるに至るものであるからである。ところで、本件において確定すべきは、新規に宅地の賃貸借契約を締結する場合に評定すべき正常賃料ではなく、既存の宅地の賃貸借契約に基く賃料を改定する場合に評定すべき特殊賃料(継続賃料)である。そうとすれば、本件の場合、積算式評価法の基礎となる土地の価格は、賃料増額請求当時の土地の価格(更地価格)ではなく、右価格から借地権価格(これは本件各土地の場合、更地価格の七割と認めるのが相当である)を控除したいわゆる底地価格であるというべきである。蓋し、借地権の付着した宅地につき賃貸人たる地主側に留保されている土地の価格は右底地価格にすぎないものであるからである。そこで次に、期待利回りについて考えてみると、通常右利回りは不動産の取引利回り、公債利回りその他一般の金利水準に照らし、年五分ないし六分とするのが客観的に適正であるとされるが、元来前記継続賃料については、従前からの賃貸借契約の内容、過去における賃料値上の経緯、権利金、敷金又は更新料等の授受の有無、当事者の生活状態及び力関係等、要するに個別的要因によって大きくその決定が左右されるものであるうえ、一般に急激な地価の上昇、異常な物価の高騰、大幅な租税の増加等経済変動の激しい場合には、庶民の生活はこれに追随することができず、従って賃料も相当低額に押さえられる傾向があり、殊に永年賃貸借が継続した住宅地については、特段の事情がない限り、賃料は適正ないし期待される利潤率よりかなり下廻るのが実情であるから、本件のような住宅地で、しかも長期間賃借した継続賃料の利回りにつき直ちに前記客観的基準に従うことは相当でなく、本件の場合は、前記個別的要因、特に過去における賃料値上の経緯(その中でも、合意によって改定された賃料の額及び利回り並びにその時期)、権利金その他一時金の授受の有無及び当事者の生活状態等を十分に考慮し、地主と借地人の利益を妥当に調整して、両者の共存できる合理的な期待利回りを決定すべきものである。しかるところ、本件各土地の賃料は各賃貸借契約の締結以来何回かにわたり改定され、その最終の合意賃料は、被控訴人三浦を除き、昭和四〇年三月当時いずれも一ヶ月三・三平方米当り金三〇円であったこと及び右三浦の最終の合意賃料は同四一年八月に改定された一ヶ月同平方米当り金六〇円であったことは前認定のとおりである。そこで、右各賃料の利回りについて考えてみると、本件各土地を含む前記宅地二四番一号の昭和四〇年三月当時及び同四一年八月当時の各時価(更地価格)が三・三平方米当り約一二万円及び約一四万円であったこと並びに同土地の昭和四〇年及び同四一年における固定資産税及び都市計画税の合計額が同平方米当り金七六円及び金一一二円であったことは前認定のとおりであるから、同土地の底地価格(更地価格の三割)に対する前記賃料金三〇円の利回りは僅か年七厘にすぎず、又前記賃料金六〇円の同様の利回りは年一分四厘であったことが明らかであって、これは相当重視すべき事柄である。蓋し、長期にわたる賃貸借の継続中、当事者間に複数回、合意によって賃料の改定がなされた場合は、当事者は各賃料改定の都度、当該契約の推移にかゝるあらゆる事情を考慮して、利害を打算し、賃料の改定をしたものと推認するのを相当とするから、その結果改定された賃料額は、いずれも、当時における客観的基準による適正賃料がいか程であったかに関係なく、一応当該当事者間の限定賃料としては最も妥当なものであったというべく、殊に最終の合意賃料の額、従ってその利回りは、その後における賃料増額請求の当否につき判断をする際、従来までの当事者の賃料改定に対する基本的姿勢を示す最新の資料として、又将来合意による賃料改定がなされるとすれば、その額はいか程になるかを予測させるものとして、斟酌せざるを得ない規範性を有するものといわざるを得ないからである。しかしながら、被控訴人三浦を除くその余の被控訴人らに対する前記最終の合意賃料の利回りは余りにも低率である(だからこそ、その後間もなく控訴人から賃料増額の請求があったものと推認される)。従って、右利回り(年七厘)をもって前記積算式評価法による本件各賃料の期待利回りとすることは、甚だしく賃料の収益性(経済性)を無視するもので、それ自体既に不相当であるのみならず、昭和四〇年以降における異常な物価の高騰及び大幅な租税の増加(これは当裁判所に顕著な事実である)の下、前認定のように主として本件賃料収入等により一家の生計を維持している控訴人と中流以上の生活を営んでいる被控訴人らとを比較し、又被控訴人三浦以外、控訴人側に対し、誰ひとり各賃貸借契約締結の際も、その後同契約を更新する際も、権利金、敷金その他いかなる一時金も支払ったことがない前認定の事実を併せ考えれば、前記利回り年七厘は地主の一方的犠牲において借地人らに利益を与えるものであるというの外ないから、本件各賃貸借の賃料の期待利回りは、これを右七厘から相当程度引上げて、賃料の収益性を高めることが必要である。そこで右引上げの率及び方法について按ずるに、以上認定の本件各賃貸借契約における諸般の事情及び本件各賃料増額請求当時以降における異常な経済変動に鑑みれば、本件各賃料の期待利回りは少くとも年二分を下廻らないものとするのが当事者の利益を妥当に調整し、両者の共存できる合理的な下限であるというべきである。しかし、だからといって、本件各増額請求のすべてにつき、右期待利回りを一挙に年二分まで引上げることは相当でない。蓋し、従来低額であった賃料を急激に増額することは、賃借人の生活に大きな変化と不利益をもたらすものであるから、理由はともかく、なるべくこれは避けることが望ましいうえ、賃貸借が当事者の信頼関係を基礎とするものであること及び本件各賃貸借がいずれも更新せられた(これは弁論の全趣旨により明らかである)、きわめて長年月にわたるものであることに思いを致せば、信義則の上からも急激な増額は妥当でなく、適当な間隔をおいた増額請求の都度、漸進的段階的に引上げるのが相当であると考えられるからである。ところで、本件各増額請求が昭和四二年六月を初回とし、同四七年五月まで、四回にわたり、初回は最終の合意による賃料改定時から二年以上(但し、被控訴人三浦については約一年)、その他はそれぞれ前回から一年ないし二年半の間隔をおいてなされたものであることは前認定のとおりである。そうとすれば、本件各賃料の期待利回りは、以上認定の諸事情に照らし、被控訴人三浦を除き、昭和四二年六月の第一回の増額請求時は年一分三厘、同四三年八月の第二回の請求時は年一分四厘、同四六年五月の第三回の請求時は年一分五厘、同四七年五月の第四回の請求時は年一分六厘と、それぞれ決定するのが相当である。しかし、被控訴人三浦については、本件増額請求前の最終の合意賃料の利回りが年一分四厘であったことは前記のとおりであるから、この事実だけからすると、同人に対する利回りは、右割合を基点として、増額請求の都度、順次年二分まで引上げていくのが相当であるとされなくもないが、他方同被控訴人は昭和四一年八月、更新料名義で控訴人に対し金四〇万八、〇〇〇円を支払っていることも前認定のとおりであるから、いかなる名義による一時金も支払ったことがないその余の被控訴人らが年一分三厘を初回として利回りを引上げられるのに対し、被控訴人三浦だけが年一分四厘を初回として利回りを引上げられることは、何としても不公平であるのみならず、一般に借地契約においては、借地人が権利金その他の一時金を支払った場合は、賃料は少くとも当分の間は値上げされないか又はその割合を低くされるのが通常であるから、以上を綜合勘案すれば、被控訴人三浦については、前記第一回の増額請求時は逆に年一分二厘の利回りとし、第二回の請求時から始めてその余の被控訴人らと同率の前記各利回りとするのが相当であるというべきである。

そこで、以上説示の各構成要素による積算式評価法によって、本件各増額請求時における被控訴人らの賃料額を算出すると、

1  昭和四二年六月の第一回増額請求時は

(一)  被控訴人井伏、同角、同甲斐荘については、左記数式により、

(以下、説明は同様である)

一ヶ月三・三平方米当り金六六円となり、

(二)  被控訴人三浦については、左記数式により

〔{(16万円×0.3)×0.012}+141円+{(16万円×0.3)×0.012}×0.03〕÷12=61円

一ヶ月三・三平方米当り金六一円となり、

2  昭和四三年八月の第二回の増額請求時は、被控訴人ら全員につき、左記数式により、

〔{(18万円×0.3)×0.014}+181円+{(18万円×0.3)×0.014}×0.03〕÷12=80円

一ヶ月三・三平方米当り金八〇円となり、

3  昭和四六年五月の第三回の増額請求時は、被控訴人ら全員につき、左記数式により

〔{28万円×0.3)×0.015}+462円+{(28万円×0.3)×0.015}×0.03〕÷12=147円

一ヶ月三・三平方米当り金一四七円となり、

4  昭和四七年五月の第四回の増額請求時は、被控訴人ら全員につき、左記数式により

〔{(33万円×0.3)×0.016}+580円+{(33万円×0.3)×0.016}×0.03〕÷12=184円

一ヶ月三・三平方米当り金一八四円となることが明らかである。

ところで、昭和四〇年三月から同四七年七月までの本件各土地附近の借地の賃料事例は前認定のとおりである。そして≪証拠省略≫を綜合すれば、右賃料事例の各対象地は、いずれも立地条件その他において本件各土地と大差がない、ほぼ同格の住宅地であって、一、二の例外を除き、概ね同等の賃料水準にあることが認められるから、前記認定の積算式評価法による各賃料に右近隣地域の賃料事例(但し、この中、昭和四二年及び同四三年の各事例は余りにも収益性が低いので、斟酌する価値が少ない)を斟酌して勘案すると、控訴人の前記各増額請求の時期における本件各土地の適正賃料は左記数額と認めるのが相当である。

被控訴

人名

増額請求の時期

増額の始期

賃料

一ヶ月

三・三平方米当り

井伏

四二・六・二六頃

四二・七・一

六六円

四三・八・三〇〃

四三・九・一

七九円

四六・五・二〇〃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇〃

四七・六・一

一八〇円

四二・六・二六〃

四二・七・一

六六円

四三・八・三〇〃

四三・九・一

七九円

四六・五・二〇〃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇〃

四七・六・一

一八〇円

甲斐荘

四二・六・二六〃

四二・七・一

六六円

四三・八・三〇〃

四三・九・一

七九円

四六・五・二〇〃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇〃

四七・六・一

一八〇円

三浦

四二・六・二八〃

四二・七・一

六〇円

四三・八・三〇〃

四三・九・一

七九円

四六・五・二〇〃

四六・六・一

一四〇円

四七・五・一〇〃

四七・六・一

一八〇円

そうとすれば、本件各土地中、被控訴人井伏、同角、同甲斐荘に各賃貸してある部分の賃料は、控訴人の前記各増額の意思表示により、昭和四二年七月一日以降右適正賃料及び増額の意思表示の範囲内である一ヶ月三・三平方米当り金五七円に、同四三年九月一日以降右適正賃料の範囲内である一ヶ月同平方米当り金七九円に、同四六年六月一日以降右適正賃料及び増額の意思表示の範囲内である一ヶ月同平方米当り金一四〇円に、同四七年六月一日以降右適正賃料の範囲内である一ヶ月同平方当り金一八〇円に、それぞれ増額されたものというべく、又被控訴人三浦に賃貸してある部分の賃料は、控訴人の前記第二回以後の各増額の意思表示により、被控訴人井伏、同角、同甲斐荘と同様、昭和四三年九月一日以降一ヶ月三・三平方米当り金七九円に、同四六年六月一日以降一ヶ月同平方米当り金一四〇円に、同四七年六月一日以降一ヶ月同平方米当り金一八〇円に、それぞれ増額されたものというべきであるが、被控訴人三浦に対する控訴人の昭和四二年六月の賃料増額請求の意思表示は、結局右増額請求の要件を具備せず、法律上無効であるというの外ない。従って、控訴人の被控訴人三浦に対する請求中、右増額請求の有効であることを前提として、昭和四二年七月一日から同四三年八月三一日までの増額賃料と供託賃料との差額等を求める部分は、爾余の点につき判断をするまでもなく、理由がない。

三  そこで進んで、被控訴人らの未払賃料の額について判断する。

1  まず控訴人の原審において勝訴した部分を除く従前の請求の分(但し、減縮されたもの)について按ずるに、被控訴人らが昭和四三年九月一日から同四六年三月三一日まで三一ヶ月分の本件各土地の賃料として、被控訴人井伏において一ヶ月金六、〇九一円(三・三平方米当り金六五円)の割合による合計金一八万八、八二一円、同角において一ヶ月金一万四、七一四円(同平方米当り金六五円)の割合による合計金四五万六、一三四円、同甲斐荘において一ヶ月金八、四三一円(同平方米当り金六五円)の割合による合計金二六万一、三六一円、同三浦において一ヶ月金三、〇九〇円(同平方米当り金六〇円)の割合による合計金九万五、七九〇円を各弁済供託したこと及び控訴人が右各供託賃料の還付を受けたことは当事者間に争いがない。そうとすれば、被控訴人らの昭和四三年九月一日から同四六年三月三一日までの本件各土地の未払賃料及び右期間内の前記増額賃料と供託賃料との差額に対する支払期日後の年一割の割合による利息は、それぞれ左記のとおりとなることが計算上明らかである。

(一)  未払賃料

(1) 被控訴人井伏―金四万六四一円

(以下、説明は同じ)

(2) 被控訴人角―金九万八、一七七円

{(79×226.34)×31}-{(65×226.34)×31}=554,311-456,134=98,177

(3) 被控訴人甲斐荘―金五万六、三二七円

{(79×129.72)×31}-{(65×129.72)×31}=317,688-261,361=56,327

(4) 被控訴人三浦―金三万三四九円

{(79×51.5)×31}-{(60×51.5)×31}=126,139-95,790=30,349

(二)  差額に対する利息

(1) 被控訴人井伏―金五、〇七四円

1311円×0.1×{(43年10月1日~46年3月31日)+(43.11.1~46.3.31)+(43.12.1~46.3.31)+……+(46.2.1~46.3.31)+(46.3.1~46.3.31)}÷365=1311×0.1×14128÷365=5074円

但し、右(43.10.1~46.3.31)とあるは同期間の日数を示し、計算すれば912日となり、昭和43年9月分の利息のつく日数である。そして{ }内を計算すれば、原判決末尾添付計算表(5)のとおり14128日となる。以下、同じ計算方法による。

(2) 被控訴人角―金一万二、二五八円

(79×226.34)-(65×226.34)=3.167

3167×0.1×14128÷365=12258

(3) 被控訴人甲斐荘―金七、〇三三円

(79×129.72)-(65×129.72)=1.817

1817×0.1×14128÷365=7033

(4) 被控訴人三浦―金三、七八九円

(79×51.5)-(60×51.5)=979

979×0.1×14128÷365=3789

しからば、被控訴人らは控訴人に対し、それぞれ、左記のとおりの前記各未払賃料と差額に対する利息との合計額及びその内金である右各未払賃料に対する弁済期後である昭和四六年四月一日から完済まで借地法所定の年一割の割合による利息の支払をなすべき義務のあることが明らかであるが、控訴人のその余の従前の請求は理由がないものといわなければならない。

被控訴人名

未払賃料

差額に対する利息

合計額

井伏

四〇、六四一

五、〇七四

四五、七一五

九八、一七七

一二、二五八

一一〇、四三五

甲斐荘

五六、三二七

七、〇三三

六三、三六〇

三浦

三〇、三四九

三、七八九

三四、一三八

(単位円)

2  次に控訴人の当審における新請求の分について按ずるに、前認定のとおり増額された各賃料と控訴人の自認し且つ自ら差引く被控訴人らの各供託賃料とによれば、被控訴人らの本件各土地の未払賃料は、それぞれ左記のとおりとなるというべきである。

(一)  被控訴人井伏―金二一万一五五円

(以下、説明は同じ)

(二)  被控訴人角―金五〇万九四二円

〔{(79×226.34)×2}+{(140×226.34)×12}-220972〕+〔{180×226.34})×13}-223730〕=195039+305903=500942

(三)  被控訴人甲斐荘―金二九万九八七円

〔{(79×129.72)×2}+{(140×129.72)×12}-124519〕+〔(180×129.72)×13}-126464〕=113906+177081=290987

(四)  被控訴人三浦―金一一万七、八二三円

〔{(79×51.5)×2}+{(140×51.5)×12}-47125〕+〔{(180×51.5)×13}-50219〕=47532+70291=117823

そうとすれば、被控訴人らは控訴人に対し、それぞれ、左記のとおり未払賃料及び上段の内金に対するその弁済期後である昭和四七年六月一日から、下段の内金に対するその弁済期後である同四八年七月一日から、いずれも完済まで、借地法所定の年一割の割合による利息の各支払をなすべき義務があることは明らかであるが、控訴人のその余の新請求はいずれも理由がないものといわなければならない。

被控訴人名

未払賃料

内金

内金

井伏

二一〇、一五五

八二、二六一

一二七、八九四

五〇〇、九四二

一九五、〇三九

三〇五、九〇三

甲斐荘

二九〇、九八七

一一三、九〇六

一七七、〇八一

三浦

一一七、八二三

四七、五三二

七〇、二九一

(単位円)

四  よって、以上と理由は異るが、控訴人の従前の請求につき、前記の限度においてのみこれを認容し、その余を棄却した原判決は、結論において正当であって、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条第二項によりこれを棄却し、控訴人の当審における新請求につき前記の限度においてのみこれを認容し、その余はこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第九二条を各適用し、仮執行の宣言についてはこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山孝 裁判官 古川純一 岩佐善己)

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